建造工程

建造工程

自重6千トンにもなる巨大な船ができあがるまでには、様々な工程があります。
航行する、貨物を積載する、乗組員が生活するといった複雑な機能を持った船を造るためには、どの工程も欠かすことはできません。
豊富な経験と柔軟な発想力を持った設計陣や、昔ながらの技術を継承した職人たちなど、多くの人達がきめ細やかに管理されたスケジュールに沿って効率的に船を造り上げていきます。

設計

設計は基本設計と詳細設計に大別され、基本設計は受注前から船主と打合わせをして要望をまとめ、様々な制約の中で最大限の性能を発揮できるように全体の計画を立てます。詳細設計は基本設計がまとめた図面や情報を細分化し、合理的な生産が行えるように図面を作成していきます。この図面を基に建造がスタートします。

現図

設計図は縮小、省略されて書かれているため、設計図を基に鉄板を切ることはできません。また、船は曲面で構成されているので平面に展開する必要があります。現図とは設計図を基に実際に切断、組み立て可能な型を作る作業です。 以前は実物大の型を作成していましたが、近年ではコンピューターを使用して切断データを作成しています。

NC切断

現図によって作られた型を基に、鋼板から実際に部品の形を切り抜いていく作業です。以前は職人が切断機を使って切っていましたが、現在では機械化されており、現図の切断データをNC切断機に入力すると自動的に複雑な形を正確に切り出すことができます。部品の名前や取付け場所等を記入するマーキングも同時に行っていきます。

曲げ加工

船は複雑な曲面で構成されていますが、 材料の鋼板は平面なので曲げる作業が必要になります。 プレス機で押したり、ガスバーナーで表面を熱したりして、曲げ型に合うように少しずつ丁寧に曲げていきます。特に外板のなめらかな曲面を熱加工によって曲げる作業は大部分が職人による手作業で行われており、まさに匠の技といえるでしょう。

組立

巨大な船を一度に建造するのは効率が悪いため、一定の大きさのブロックに分割して工場の中で組み立てるブロック建造法を採用しています。NC切断・曲げ加工された部品を溶接し、立体のブロックに組み上げます。

ブロック搭載及び組立

工場内で組み立てられたブロックをクレーンで船台上に正しい順序で並べてつなぎ、最終的な船の形に組み上げます。ブロックの据付位置が狂うと船の形が歪んでしまうため、正確な位置に据えなければなりませんが、ブロックは大きなもので150トンもの重さがあり、たいへんな技術と労力を必要とする作業です。

塗装

船の組み立てが終わると塗装が始まります。塗装は単に船の見栄えを良くするためだけではなく、船体が腐食するのを防ぐといった安全面でも大きな役割を果たしています。さらに、環境問題への対応のため、塗装基準が強化されており、非常に重要な要素を占める工程です。

進水

船はブロック搭載と塗装が終わると初めて海に浮かべられます。船台は海の方向にすべり台のように傾いていて、この上をすべらせて船を海に浮かべます。進水は造船所のスタッフが最も緊張する瞬間であるとともに船を建造する上で大きな節目であり、この日は一般の方も招いて進水式を盛大に行います。

艤装

艤装とは出来上がった船体へパイプ、エンジン、内装、電線などを装備していく事をいいます。進水前までには約7割の工事を終え、進水後に艤装岸壁へ係留させ残りの工事を行っていきます。着々と出来上がっていく艤装品に対してそれぞれの検査も行っていきます。

試運転

艤装工事を終えた後、実際に船を走らせて船速、旋回などの性能の確認テストを行い、契約仕様を満足している事を船主と造船所間で確認をします。同時に船に搭載した機器が本来の性能を発揮するように動作確認及び機能テストを行います。試運転を終えると後は引渡しを待つばかりとなります。

引き渡し

船が造船所を離れ、ついに大海原へと出航していきます。この日を迎える頃には全ての乗組員がそろい、色々な国籍の人々が造船所内を行き交っています。準備が整えば、いよいよ出航です。オーナーなどのゲストや造船所のスタッフに見送られて、世界の海に飛び出していきます。

Bon Voyage!